デジタルツインのビジネスケースの作り方
デジタルツインのビジネスケースは、技術からではなく、工場が近いうちに下さなければならない高額な意思決定の1つから始めるべきです。その意思決定を明確にし、選択を誤った場合のコストを見積もり、それを選択肢を事前に検証するシミュレーションのコストと期間と比較します。自社工場の数字がある箇所ではそれを使い、見積もりにはすべて見積もりと明記し、プラス面の隣にマイナス面も示します。そうすれば、CFOはケースを1行ずつ確認できます。
プラットフォームではなく、意思決定から始める
弱いビジネスケースは、技術から書き始めます。インダストリー4.0、スマートファクトリー、デジタルトランスフォーメーションのプログラムです。誰も検証できないため、承認されにくくなります。
強いケースは、予定に入っている意思決定から書き始めます。「来四半期、プレスラインを新棟へ移す。レイアウト案は3つある。」「工程4にロボットセルを導入する予定だが、ラインがそれに十分な部品を供給できるか分からない。」「来年はもっと生産量が必要だが、第3シフトか第2ラインかを決めきれない。」
次の条件を満たす意思決定を1つ選んでください。
- 高額、または後戻りが難しい。 レイアウト変更、新棟、ロボット、生産能力への投資などです。
- 意見が分かれている。 選択肢が複数あり、議論に決着をつける数字がありません。
- 時期が近い。 シミュレーションの結果が数か月以内に使われます。
よく選んだ意思決定1つのほうが、考えられる10の用途を並べたリストより良いケースになります。
判断を誤った場合のコストを数字にする
シミュレーションの価値とは、回避できたミスのコストに、見つけられたより良い選択肢の価値を加えたものです。シミュレーションは、自社工場のデータから得たサイクルタイム、停止、共用リソースのばらつきを含めて各選択肢を時間軸で動かすことで、その両方を見つけます。平均値を並べたスプレッドシートにはこれができません。まずミスから始めてください。その代償は、過去のプロジェクトを通じて自社工場がすでに知っているからです。
レイアウトや生産能力の判断を誤った場合の典型的なコストは次のとおりです。
- 設備を2回移設すること(2回目の移設にかかる据付・搬入作業、設置、電気工事、生産ロス)
- 立ち上がりの遅れ(部品がどこで滞留しているかをチームが突き止めるまで、何週間も生産量が落ちる)
- 流れの問題を隠すために膨らみ、ラックに運転資金を寝かせてしまうバッファ在庫
- 想定の生産速度に達しないラインを補うための残業と追加シフト
- 周囲の流れが確認されていなかったために部品を待つ自動化投資
直近2〜3回の変更を振り返ってください。手戻り、残業、生産ロスにいくらかかったでしょうか。それは自社工場の実際の数字であり、財務部門が検証できます。
ケースに盛り込む内容と、各行の表記方法
ケースの各項目には、数字の出どころと、財務部門がどこまで信頼してよいかを示す表記が必要です。
| ビジネスケースの項目 | 数字の出どころ | 表記方法 |
|---|---|---|
| シミュレーションプロジェクトのコストと期間 | サプライヤーの見積もり | 事実 |
| 検証する意思決定の予算 | 承認済みまたは計画中の設備投資(CAPEX) | 事実 |
| 選択を誤った場合のコスト | 過去のプロジェクトでの手戻り、残業、生産ロス | 見積もり(範囲で表示) |
| 現在バッファに寝ている運転資金 | 在庫金額 | 事実 |
| より良い選択肢による改善効果 | 検討後のシミュレーション結果 | 検討前は不明 |
| 損益分岐となる改善効果 | 上の2行から算出 | しきい値であり、予測ではない |
多くのケースがつまずくのは5行目です。検討前の段階では、最良の選択肢がどれだけ優れているかは誰にも分かりません。この段階で生産量の増加率を固定値でケースに書き込むことは、根拠のない数字を使うことを意味し、慎重なCFOならそれに気づきます。
代わりに、損益分岐のしきい値を使ってください。例示として、あるラインの利益が1稼働日あたり20,000で、工場の年間稼働日数が250日だとします。最良のレイアウトで生産量がわずか1%増えるだけでも、1日あたり200、年間で50,000になります。これを検討のコストと比較します。これらの例示的な数字を自社の数字に置き換えても、問いは同じです。どれほど小さな改善でこの作業の元が取れるか、です。答えが「その場の誰もが予想するより小さい」なら、ケースは簡単です。大きな改善が必要になるなら、より大きな意思決定を選ぶか、範囲を絞ってください。
最初の意思決定の範囲設定にお困りですか?
予定に入っているレイアウト、自動化、生産能力の意思決定を挙げてください。そのシミュレーションで何をカバーし、どのデータが必要かの概要をお示ししますので、ケースの1行目を実際の見積もりに基づいて書けます。
実例:レイアウトプロジェクトがもたらしたもの
高品質な木製家具を製造する、創業20年以上の中堅メーカーは、生産・倉庫のレイアウトが変化する生産環境に合わなくなっていることに気づきました。製品の幅が広く、材料と情報の流れが遅くなっていました。材料と完成品のバッファが不足していたため柔軟性が下がり、遅れが生じていました。
DBR77は、現在の生産・倉庫レイアウトのデジタルツインを構築し、材料の流れをシミュレーションしました。AIが重要なエリアを特定し、レイアウト案を生成しました。専門家が最良の案を選び、選ばれたレイアウトをシミュレーションしました。その結果は次のとおりです。
- バッファの撤廃後、運転資金を300,000 PLN削減。
- 部門コストを14%削減。
- 直接労働の必要人員をフルタイム1.5人分削減。
- 生産エリアのマッピングには数日かかりました。その後のAIによる最適化は、数日ではなく数秒で終わりました。
これらは1つの工場の数字です。この結果が示しているのは、レイアウトプロジェクトがビジネスケースのどの項目を動かせるか、つまり運転資金、部門コスト、労働力です。自社のケースでどの項目を測定するかを選ぶために使い、数字そのものは自社工場から取ってください。
プラス面の隣にマイナス面を示す
承認委員会は、何がうまくいかない可能性があるかを示すケースを信頼します。次の3点を加えてください。
- 結果が何に左右されるか。最良の選択肢が、サイクルタイムが最良の状態を保つときにしか勝たないのであれば、そう明記します。その検証方法は承認前に感度分析が示すべきことで解説しています。
- 設備停止、納入遅れ、需要のピークといった同じ外乱の下で、選択肢がどう比較されるか。どのシナリオももっともらしく見えるときに設備投資案を比較する方法をご覧ください。
- 検討で答えられないこと。範囲の限界を事前に示しておけば、後の失望を防げます。
確率的シミュレーションの結果は範囲として出てくるため、マイナス面を率直に示すケースに適しています。
最初のケースは範囲を絞る
最初のケースで、工場全体のプログラムを正当化する必要はありません。意思決定1つ、エリア1つ、そしてすでに手元にあるデータ(CADレイアウト、工程順序、サイクルタイム、受注構成)から作ったモデルです。DBR77 IIoTによる設備のリアルタイムデータは、モデルを頻繁に使うようになってから後で接続できます。
その後もモデルは残ります。選んだ案が実現したら、ベースモデルを工場に合わせて更新します。ロボット、新製品、別の移設など、2つ目の意思決定はそのモデルから始まるため、コストも時間も少なくて済みます。このことはケースの中で触れてかまいませんが、まだ削減効果として数えないでください。結果が出たら、シミュレーション結果を経営陣に提示する方法で説明しているように提示してください。
よくある質問
デジタルツインのプロジェクトにはいくらかかりますか?
範囲によって異なります。エリアの広さ、案の数、利用できるデータです。特定の意思決定1つについて見積もりを依頼してください。その数字が、事実としてケースに入ります。
想定される削減効果をビジネスケースに入れるべきですか?
検討前に単一の数字として入れるべきではありません。損益分岐のしきい値を使い、シミュレーション後に測定された結果を加えてください。自社工場の過去のプロジェクトコストは、範囲付きの見積もりとして入れることができます。
最初の検討はどのくらいの期間で結果が出ますか?
家具メーカーの事例では、生産エリアのマッピングに数日かかり、その後のAIによる最適化は数秒で終わりました。期間は範囲とデータによって異なります。
ビジネスケースの責任者は、財務部門と生産部門のどちらにすべきですか?
両方です。生産部門が意思決定と選択肢を明確にします。財務部門が数字と表記を確認します。両者が署名したケースは、却下されにくくなります。
まとめ
ケースを書く前に、直近2〜3回のレイアウト変更や生産能力の変更で、手戻り、残業、生産ロスにいくらかかったかを集め、そのうちどの数字を財務部門が受け入れるかをコントローラーと合意してください。そのうえで、検証したい意思決定について損益分岐となる改善効果を算出します。その改善効果が、その場の誰が予想するよりも小さければ、ケースを書く準備は整っています。
あなたの意思決定について、シミュレーションが何を示すかを確認しましょう
より良い選択肢による改善効果は、ビジネスケースの中で事前に埋められない唯一の項目です。デモでは、DBR77 Digital Twinでレイアウト案や投資案を比較し、その数字がどこから出てくるかをご紹介します。
出典
- DBR77、ケーススタディ:レイアウト最適化(本サイトの事例ページ)
- DBR77 Digital Twin、決定論的シミュレーションと確率的シミュレーションの比較
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