シミュレーション結果を経営陣・取締役会に提示する方法
シミュレーション結果は、1つの意思決定につながる1ページの資料として経営陣に提示します。まず求める意思決定を示し、比較した2〜4つの案と、それぞれが同じシナリオでどうだったかを示し、モデルの出力をお金、納期、リスクに置き換え、重要な前提とその責任者を明記し、何が起きたら意思決定を見直すかを述べます。グラフ、実行結果、モデルの詳細は付録に回します。そのページだけで経営陣が決められないなら、そのページはまだ完成していません。
シミュレーション結果が経営会議で止まってしまう理由
シミュレーションの作業は、技術的なグラフで終わってしまうことがよくあります。工程別の稼働率、行列の長さ、リードタイム、新棟の3Dアニメーションなどです。エンジニアにとっては有用でも、経営会議では2つの問題を生みます。
第一に、経営陣には何を決めようとしているのかが見えません。バッファ水準のグラフは「案Bをこの金額で、この日までに承認する」とは語ってくれません。第二に、会議がモデルの見学ツアーになってしまいます。誰かがフォークリフトがなぜそう動くのかと尋ね、続く20分が細部に費やされ、意思決定は次の会議に持ち越されます。
そうなると経営陣は、慣習や推進者への信頼で決めるか、まったく決めないかのどちらかになります。役に立つのは、モデルと意思決定のつながりをより明確にすることです。
意思決定を1文で書くことから始める
スライドを作る前に、意思決定を述べる1文を書いてください。何を承認するのか、いくらの資金を投じるのか、いつ実行に移すのかを含めます。
例えば、「第2工場棟を中央バッファ付きのレイアウトに変更することを、ビジネスケースの予算で承認し、8月の計画停止期間に据え付ける。」
ページのほかの内容はすべて、この1文を裏付けるか、問い直すためのものです。この1文が書けないなら、その作業はまだ経営陣に出す段階ではありません。案の比較がまだ必要なのかもしれません(どのシナリオももっともらしく見えるときに設備投資案を比較する方法で解説)。あるいはビジネスケースが必要なのかもしれません(デジタルツインのビジネスケースの作り方で解説)。
1ページに載せるもの
シミュレーションに基づく経営陣向けのページは、6つの要素で構成されます。それぞれ数行に収まります。
- 意思決定の1文: 何を、いくらで、いつ。
- 比較した案: 「先送り」を含め、名前を付けた2〜4つの案と、弱い案を早い段階で外した理由を1行で。
- 使用したシナリオ: ベースケースと、すべての案が通ったストレスケース。需要の減少、ボトルネック工程の停止、サプライヤーの遅れなどです。
- 順位とトレードオフ: どの案を推奨するか、それが何をもたらし、何のコストがかかるかを、ビジネスの言葉で。
- 主な前提: 結果を左右する3〜5つの入力と、それぞれの責任者。
- 見直しのトリガーとレビュー日: どんな出来事が起きたらモデルを再実行するか、そしていつ結果を現実と照らし合わせるか。
悲観ケースは、ベースケースと並べてページに載せてください。ベースケースしか見ない経営陣は、それが計画だと思い込みます。結果がどの入力に左右されるかの示し方は、承認前に感度分析が示すべきことにまとめています。
モデルの出力を経営陣の言葉に置き換える
エンジニアは行列と稼働率で語ります。経営陣は、お金、納期、リスクで判断します。会議の前に、誰かが翻訳しなければなりません。
| モデルの出力 | 経営陣にとっての意味 |
|---|---|
| ボトルネック前の待ち時間 | 納入遅れと残業のリスク |
| 現場の仕掛品 | 寝ている運転資金と使われている床面積 |
| ボトルネックが別の工程に移る | 次の問題と次の投資が発生する場所 |
| 据付後、生産量が安定するまでの週数 | 効果が数字に表れ始める時期 |
| 主要工程停止時に失われる生産量 | 1回の故障に対して工場がどれだけ脆弱か |
| フォークリフトと搬送車の稼働率 | 搬送設備や運転者の追加が必要になるかどうか |
順位付けでは、この言葉を使ってください。「案Bは通常の週の生産量はわずかに少ないが、寝かせる在庫が少なく、塗装ラインが止まったときの損失も少ない」は、CFOが行動に移せる文です。「案Bは工程4の平均稼働率が低い」は、そうではありません。
経営陣が読み取れる結果をご覧ください
比較結果を納入リスクと運転資金に置き換えれば、経営陣向けのページはずっと短くなります。デモでは、DBR77 Digital Twinの結果でその置き換えを行う様子と、会議で3DやVRのビューを見せる価値があるのはどんなときかをご紹介します。
意思決定で終わる30分のレビューを進める
経営会議の持ち時間は短いものです。時間が意思決定に使われるよう、固定のアジェンダを使います。
- 0〜5分:意思決定の1文、案、推奨する順位。何を決めるのかについて合意します。
- 5〜15分:悲観ケースと、順位を変えうる入力。受け入れるリスクと取り除くリスクを挙げます。
- 15〜25分:意思決定そのもの(承認、段階的な承認、保留、却下)を、理由とともに決めます。
- 25〜30分:責任者、日程、次のレビュー時点を議事録に記載します。
ページと付録は、少なくとも会議の数日前に送ってください。そうすれば、細部についての質問は会議の前に書面で届きます。
付録に回すものと、その場で断るもの
付録は、経営陣のメンバー、またはその委任を受けた人が作業内容を確認するための場所です。シナリオの一覧、案ごとの主な結果、感度分析の実行結果、モデルの境界(モデルが含むものと含まないもの)、主な入力の出どころを含めます。
会議の場では、次の4つを丁寧にお断りしてください。
- モデルのその場での修正(質問を書き留め、書面で回答する)
- 同じシナリオを通っていない新しい案(次のラウンドで検討できる)
- 3Dの見た目についての議論(見た目の品質は意思決定を変えない)
- 答えるべき問いのない深掘り(フォローアップに回す)
意思決定を早めるのであれば、ビジュアルにも出番があります。自動車用ランプメーカーの工場拡張プロジェクトでは、経営陣が最終設計をVRで確認し、移す工程の順序をより早く決めることができました。このVRレビューは明確な問いに答えるものであり、持ち込むビジュアルを判断する妥当な基準になります。
ページを送る前のテスト
プロジェクトに関わっていない人にページを渡してください。意思決定の内容、主なリスク、そして負けた案がなぜ負けたのかを説明してもらいます。説明できれば、そのページは完成です。モデル、グラフ、あるいはエンジニアの説明が必要なら、まずページを締め直してください。
さらに2つのチェックが役立ちます。財務部門が、案ごとに資金のタイミングがどう違うかを把握できること。生産部門が、結果の背後にある人員配置と流れの前提に納得できること。どちらかができなければ、その場で指摘が出て、意思決定は先送りになります。
よくある質問
経営陣向けのシミュレーション要約はどのくらいの長さにすべきですか?
意思決定のための1ページと付録です。主な論点に1ページ以上が必要なら、おそらく意思決定がまだ十分に明確になっていません。
3Dモデルやアニメーションを経営陣に見せるべきですか?
移設時の設備の移動順序など、経営陣が抱いている問いに答える場合に限ります。短いVRや3Dのレビューは、そうした選択を早めることがあります。一般的なモデルの見学ツアーは、たいてい会議を遅らせます。
経営陣を混乱させずに不確実性を示すにはどうすればよいですか?
推奨案をベースケースと2〜3の悲観ケースで並べて示します。そのうえで、順位を変えうる1〜2つの入力と、それを誰が確認するかを明記します。
シミュレーションしていない案を経営陣から求められたら?
それを書き留め、ほかの案と同じシナリオに通した後に書面で回答すると約束してください。検証していない案をその場で決めてしまうと、モデルを動かした意味がなくなります。
まとめ
スライドを1枚も作らないうちに、まず意思決定の1文を書いてください。次に、ページの草案をプロジェクト外の同僚に渡します。その人が意思決定の内容、主なリスク、ほかの案がなぜ負けたのかを説明できれば、経営会議の数日前に付録と一緒に送ってください。
出典
- DBR77、ケーススタディ:工場拡張計画(本サイトの事例ページ)
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